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ひきこもり相談窓口の選び方|悩み別(生活・仕事・心)の連絡先と「たらい回し」を防ぐ相談メモ

「ひきこもりのことを相談したいけれど、役所の『〇〇課』に行けばいいのか、それとも『保健所』なのか、違いがよく分からない」
「勇気を出して電話したのに、『それはうちの担当じゃありません』とたらい回しにされるのが怖い…」

ひきこもりという問題は、生活、お金、心、仕事、家族関係など、あらゆる悩みが複雑に絡み合っています。だからこそ、日本の縦割り行政の中では「どこが自分の悩みの担当なのか」が見えにくく、最初の一歩を踏み出せない方が非常に多いのです。

私自身、元当事者として支援を求めた際、窓口の名称が難解すぎて、どこに電話をかければいいのか途方に暮れた経験があります。

この記事は、そんな分かりにくい「相談窓口」を、あなたの「今の悩み(困りごと)」から逆引きで探せるように整理した完全ガイドです。

公的機関からNPOまで、主要な窓口の「得意分野」と「使い分け」を解説し、さらに、相談員に自分の状況を正確に伝え、たらい回しを防ぐための「相談準備のコツ」までを徹底的にレクチャーします。

【逆引き】悩み別・相談窓口の選び方チャート

まずは、あなたが今一番解決したい「困りごと」は何か、心に問いかけてみてください。その答えによって、選ぶべきドアが変わります。

悩みA:「どこに相談していいか分からない」「悩みが漠然としている」

→ 正解の窓口:【ひきこもり地域支援センター】

・どんな場所?
都道府県や政令指定都市に設置されている、ひきこもり支援の「総合案内所(ハブ)」です。社会福祉士や精神保健福祉士などの専門家がいます。
・ここが良い理由:
ここは「ひきこもり」に関することなら何でも受け止めてくれます。まだ悩みが整理されていなくても大丈夫です。話を聞いた上で、「医療が必要なら病院へ」「お金のことなら自立相談へ」と、交通整理をしてくれるのが最大の役割です。
・探し方:
「〇〇県 ひきこもり地域支援センター」で検索してください。

悩みB:「お金がない」「生活費が不安」「将来の生活設計が見えない」

→ 正解の窓口:【自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度)】

・どんな場所?
すべての市町村(福祉課や社会福祉協議会など)に設置されている、「暮らし」と「お金」の相談窓口です。
・ここが良い理由:
ひきこもり状態にある方の多くは、経済的な不安を抱えています。ここでは、家計の状況を整理したり、家賃補助(住居確保給付金)や生活費の貸付、場合によっては生活保護の申請サポートなど、生活の土台を支える具体的な支援策を提案してくれます。
・探し方:
「〇〇市 自立相談支援センター」「〇〇町 くらしの相談窓口」などで検索してください。

悩みC:「眠れない」「イライラする」「精神的に不安定だ」

→ 正解の窓口:【精神保健福祉センター】または【保健所】

・どんな場所?
地域の「こころの健康」を守る公的機関です。医師、保健師、精神保健福祉士などの医療系スタッフがいます。
・ここが良い理由:
ひきこもりの背景に、うつ病や発達障害などの疾患が隠れていることは珍しくありません。「病院に行くのはハードルが高い」という場合でも、まずは保健所の無料相談で「医療にかかるべきか」を判断してもらえます。医療機関の情報も豊富に持っています。
・探し方:
お住まいの地域を管轄する「保健所」や「精神保健福祉センター」に電話してください。

悩みD:「働きたいけど自信がない」「何から始めればいいか分からない」

→ 正解の窓口:【地域若者サポートステーション(サポステ)】

・どんな場所?
厚生労働省委託の、働くことに悩む若者(15〜49歳)のための支援機関です。
・ここが良い理由:
ハローワークがいきなり「求人紹介」から始まるのに対し、サポステは「就職前の準備(コミュニケーション講座、職場体験など)」から始められます。「働きたい気持ちはあるけれど、一歩が出ない」という段階の人に最適です。
・探し方:
「サポステネット」などのサイトから、お近くの拠点を検索できます。

悩みE:「親亡き後が心配」「同じ境遇の人と話したい」

→ 正解の窓口:【ひきこもり家族会】または【民間の支援団体(NPO)】

・どんな場所?
当事者やその家族が運営する会や、民間のNPO法人です。
・ここが良い理由:
公的機関の「制度」では解決しきれない、情緒的な悩みや、将来への漠然とした不安を共有できます。先輩家族の経験談(年金の手続きや、親亡き後の備えなど)を聞くことができるのも、自助グループならではのメリットです。

悩みF:「18歳未満(不登校)」「学校に行けない」

→ 正解の窓口:【教育支援センター(適応指導教室)】または【児童相談所】

・どんな場所?
教育委員会や児童福祉の管轄になります。
・ここが良い理由:
学籍を置いたまま通える公的なフリースクールのような場所(教育支援センター)や、家庭全体の養育環境の相談(児童相談所)など、未成年特有の支援制度につなげてくれます。

たらい回しを防ぐ!「相談メモ」の作り方

自分に合いそうな窓口が見つかったら、次は実際に電話や訪問をします。ここで重要なのが「事前の準備」です。

窓口の担当者はプロですが、あなたの事情を全く知らない他人です。情報が断片的だと、適切な判断ができず、「ここでは分かりませんね…」と別の窓口を案内されてしまう(=たらい回し)リスクが高まります。

これを防ぐために、以下の項目を箇条書きにした「相談メモ」を手元に用意してから連絡しましょう。

相談メモのテンプレート(コピーして使ってください)

1. 基本情報
・本人の年齢・性別:
・ひきこもり期間:約〇年(〇歳頃から)
・家族構成(同居・別居):

2. 現在の状況(具体的に)
・昼夜逆転:あり / なし
・家族との会話:あり / なし / 筆談のみ
・外出の程度:全く出ない / コンビニは行ける / 通院はできる
・暴力や暴言:あり / なし
・気になる症状:不眠、過食、独り言など

3. 過去の経緯(きっかけ)
・不登校、就職の失敗、職場のパワハラなど(言える範囲でOK)

4. 過去に利用した支援・医療
・〇〇精神科(〇年前まで通院、現在は中断)
・ハローワーク(登録のみ)
・手帳の有無:精神障害者保健福祉手帳など

5. 【最重要】今回の相談で「一番聞きたいこと・困っていること」
(例)
・「本人が医療機関を受診するよう説得する方法を知りたい」
・「経済的に苦しいので、利用できる手当がないか知りたい」
・「まずは親の話を聞いてほしい」

特に「5. 一番聞きたいこと」を明確に伝えることが、適切な担当者に繋いでもらうための鍵となります。

相談しても「解決しなかった」と感じた時の対処法

勇気を出して相談に行ったのに、「様子を見ましょうと言われただけだった」「担当者と相性が合わなかった」と、がっかりして帰ってくることもあるかもしれません。

しかし、そこで「やっぱり相談なんて意味がない」と諦めてしまうのは早計です。公的支援を使い倒すための、少し上級者向けのテクニックをお伝えします。

1. 「計画相談支援」を利用する

もし、ご本人に障害の診断や手帳がある場合、「指定特定相談支援事業所」を利用できる権利があります。ここにいる「相談支援専門員」は、あなた専属のマネージャーのような存在です。

彼らは、あなたの希望を聞き取り、「サービス等利用計画案」を作成し、適切な福祉サービス(就労移行支援やデイケアなど)との契約をコーディネートしてくれます。自分一人で窓口を巡る必要がなくなり、プロが伴走してくれる強力なシステムです。

2. 担当者を変えてもらう(または窓口を変える)

相談員も人間です。相性の良し悪しは必ずあります。「この担当者は話しにくい」「理解してくれない」と感じたら、無理に我慢する必要はありません。

「別の方の意見も聞いてみたい」と伝えるか、あるいは窓口そのものを変えてみる(例:保健所が合わなかったら、ひきこもり地域支援センターに行ってみる)のも有効な手段です。窓口によって、持っている情報や得意なアプローチが異なるからです。

3. 「同行支援」を依頼する

「一人で窓口に行って、うまく説明する自信がない」という場合、既に繋がっている支援者(例えば、サポステのスタッフや、民生委員、NPOのスタッフなど)に、役所の窓口への「同行」をお願いできる場合があります。

専門知識のある第三者が隣にいてくれるだけで、心強さは段違いですし、役所の担当者に対しても的確に事情を伝えてくれます。

まとめ:相談は「弱さ」ではなく「戦略」である

「他人に頼るのは、自分が弱いからだ」「家族の恥をさらすようで情けない」

ひきこもりの相談をためらう背景には、こうした自責の念があることが多いです。しかし、視点を変えてみてください。

企業経営者がコンサルタントを雇うように、アスリートがコーチをつけるように、困難な状況にある時に専門家の知恵を借りるのは、問題を解決するための賢い「戦略」です。

日本には、この記事で紹介したような、無料で使える優秀な「コンサルタント(相談員)」や「リソース(支援機関)」がたくさん用意されています。これを使わない手はありません。

まずは「相談メモ」を片手に、一番ハードルが低そうな窓口へ、一本の電話をかけてみてください。そのワンアクションが、膠着した事態を動かす最初の一石になるはずです。

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