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ひきこもりの就労支援サービス比較|サポステ・就労移行・A型B型の違いと選び方完全ガイド

「そろそろ働きたい気持ちはあるけれど、いきなりハローワークに行って求人に応募するのは怖すぎる」
「長いブランクがある自分を受け入れてくれる場所なんて、あるのだろうか」
「障害の診断を受けたけれど、一般企業で働くのは自信がない…」

ひきこもり状態から「仕事」に向かおうとする時、目の前には断崖絶壁のような壁があるように感じられます。しかし、日本の就労支援システムには、その断崖絶壁に「階段」を架けるための多様なサービスが存在します。

ただ、問題なのはその種類の多さと複雑さです。「サポステ」「就労移行」「A型・B型」…。似たような名前が並び、どれが自分に合っているのか判断できず、入り口で立ち止まってしまう方が非常に多いのです。

私自身、支援機関の選び方を間違えて(いきなりハードルの高い場所に行ってしまい)、自信を喪失して逆戻りした経験があります。だからこそ、「自分に合った場所」を選ぶことの重要性を痛感しています。

この記事では、ひきこもり経験者が利用できる主要な就労支援サービスを網羅し、それぞれの「特徴」「対象者」「メリット・デメリット」を徹底比較します。あなたが無理なく、確実に社会に戻るための最適な「プラットホーム」を見つけるためのガイドブックです。

就労支援サービスの全体像:あなたに合うのはどっち?

就労支援機関を選ぶ際、最初の分岐点となるのが「障害(精神・発達など)の診断があるか、ないか」です。

ここを曖昧にしたまま動き出すと、利用条件に合わずに断られたり、適切な配慮が受けられなかったりします。大きく分けて、以下の2つのルートがあります。

ルートA【診断なし・一般枠】:
「病気や障害の診断はない(または手帳は持っていない)が、働くことに不安がある」
→ 主な支援先:「地域若者サポートステーション(サポステ)」

ルートB【診断あり・福祉枠】:
「うつ病や発達障害などの診断があり、配慮を受けながら働きたい」
→ 主な支援先:「就労移行支援」「就労継続支援(A型・B型)」

それぞれのサービスについて、中身を詳しく見ていきましょう。

【ルートA】働く前の準備運動「地域若者サポートステーション(サポステ)」

ハローワークが「仕事を紹介する場所」だとすれば、サポステは「仕事をするための“自信”をつける場所」です。厚生労働省の委託を受けてNPO法人などが運営しています。

どんなことができる場所?

サポステに行っても、いきなり「この求人はどうですか?」と迫られることはありません。まずは担当の相談員とじっくり話し、あなただけの「働き出すまでの計画」を立てます。

主なプログラム例:
コミュニケーション講座:グループワークで、他人と話す練習をします。
ビジネスマナー講座:挨拶や電話応対など、基本を学び直します。
ホンキの就職(短期集中プログラム):就活を集中的にサポートするコースもあります。
職場体験(ジョブトレ):実際に協力企業に行き、数日間〜数週間、仕事を体験します。「働けた」という実績が大きな自信になります。

対象者と利用条件

年齢:原則として15歳〜49歳まで(※以前は39歳まででしたが、現在は「サポステ・プラス」として40代も対象の地域がほとんどです)。
状態:現在働いておらず、通学もしていない方。
費用:相談やプログラムは原則無料(※交通費や一部実費は自己負担)。

メリットと注意点

メリット:
就労経験が全くない、あるいはブランクが長くても、「準備」から始められるため心理的負担が少ないです。ひきこもり支援に特化したスタッフが多く、気持ちに寄り添ってくれます。

注意点:
サポステは「職業紹介所」ではないため、直接求人を紹介することはできません(ハローワークへの同行などはしてくれます)。また、あくまで「一般就労」を目指す場所なので、福祉的な配慮(短時間勤務や通院への配慮など)が必ずしも保証されるわけではありません。

【ルートB-1】就職のための学校「就労移行支援事業所」

ここからは「障害福祉サービス」の領域です。障害者手帳を持っている、あるいは医師の診断書や意見書がある方が利用できます。

「就労移行支援」は、一般企業への就職(障害者雇用枠が中心)を目指して、「通学」しながらスキルを身につける訓練校のような場所です。

どんなことができる場所?

原則2年間という期限の中で、就職に必要なスキルを体系的に学びます。事業所によって「IT特化型」「軽作業中心」「発達障害専門」など特色が豊かです。

主な支援内容:
スキル習得:PC操作(Word, Excel)、プログラミング、軽作業など。
就活サポート:履歴書添削、模擬面接、実習先の開拓。
定着支援:就職後も、半年間はスタッフが職場との間に入り、悩み相談などに乗ってくれます。

メリットと注意点

メリット:
「障害者雇用」に強いため、自分の特性(苦手なこと)を企業に理解してもらった上で働くルートが開けます。また、毎日決まった時間に通所することで、生活リズムが整います。

注意点:
ここは「訓練」の場であり、「雇用」される場所ではありません。そのため、通所しても給料(工賃)は出ません。むしろ、前年度の世帯収入によっては利用料がかかる場合があります(多くの方は無料ですが、確認が必要です)。2年間無収入で通えるか、という経済的な計画が必要です。

【ルートB-2】働きながらリハビリ「就労継続支援(A型・B型)」

「訓練だけ(無給)では生活が厳しい」「一般企業で働く自信はまだない」という方のための、「福祉的就労(働きながら支援を受ける)」の場です。A型とB型があり、この違いを知ることが非常に重要です。

雇用契約を結ぶ「就労継続支援A型」

・仕組み:事業所と「雇用契約」を結びます。つまり、労働基準法が適用され、最低賃金以上の給料が支払われます。
・仕事内容:カフェの店員、PCデータ入力、部品の組み立てなど。
・対象:ある程度決まった時間(1日4時間〜など)毎日通える体力があり、一定の業務遂行能力がある方。
・メリット:「労働者」としての権利が守られ、履歴書にも職歴として書くことができます。

マイペースに働く「就労継続支援B型」

・仕組み:雇用契約を結びません。成果物に対して「工賃」という形で報酬が支払われます。
・仕事内容:パンやお菓子作り、手芸、農作業、簡単な袋詰めなど。
・対象:体力や体調に波があり、毎日決まった時間に通うのが難しい方。年齢制限もありません。
・メリット:「週1回、1時間から」といった非常に柔軟な働き方が可能です。ノルマやプレッシャーが少なく、ひきこもり期間が長い方の「最初の一歩」として非常にハードルが低いです。
・デメリット:賃金(工賃)が低いです。全国平均で月額1万6千円程度(時給換算で200円〜300円程度)であり、これだけで自立するのは困難です。

自分に合った支援の選び方:3つのチェックポイント

これだけ選択肢があると迷ってしまいますが、以下の3つの質問に答えることで、選ぶべき道が見えてきます。

Q1. 医師の診断(または疑い)はありますか?

YES → 「就労移行支援」か「就労継続支援(A/B)」が有力候補です。専門的な配慮を受けながら進めます。
NO → 「サポステ」から始めましょう。もし活動中に「生きづらさ」を感じたら、サポステのスタッフに相談して医療機関を受診するのも一つの手です。

Q2. 「週5日・決まった時間」に通う体力はありますか?

YES → 「就労移行支援」でスキルアップするか、「A型事業所」で働き始めましょう。
NO(昼夜逆転気味など) → 「B型事業所」で週1回から慣らすか、「サポステ」の個別相談からスモールステップで進めましょう。

Q3. 今すぐ「お金」が必要ですか?

YES → 福祉的就労なら「A型」がベストですが、ハードルが高い場合は「B型」で少額を得つつ、生活保護などの公的扶助を検討する必要があるかもしれません。または、サポステ等を利用せず、在宅ワーク(当ブログ別記事参照)や短期バイトを探す方が早い場合もあります。
NO(親の支援などで猶予がある) → 焦って働かず、「就労移行支援」や「サポステ」で、長く働き続けるための土台(スキルと体力)を作る期間に充てるのが賢明です。

利用開始までの具体的なステップ

行きたい場所の目星がついたら、どう動けばいいのでしょうか。一般的な流れを紹介します。

1. 情報収集・問い合わせ
お住まいの地域の「サポステ」や「就労移行支援事業所」をネットで検索します。多くの事業所がホームページを持っています。まずは電話かメールで「見学したい」と連絡します。

2. 見学・相談
実際に事業所に行き、雰囲気を見ます。スタッフの人柄、通っている人たちの表情、作業内容などを確認してください。「ここは自分に合いそうだ」という直感が大切です。

3. 体験利用
多くの施設で「体験利用」が可能です。数日間、実際にプログラムに参加してみます。無理なく通えそうか、作業は苦痛じゃないかを確認するテスト期間です。

4. 受給者証の申請(※福祉サービスの場合)
就労移行支援やA型・B型を利用する場合、役所の障害福祉課で「受給者証」の申請手続きが必要です(サポステの場合は不要)。事業所のスタッフが手続きをサポートしてくれます。

5. 利用開始
正式に契約し、通所スタートです。最初は週1〜2回、短時間から始めて、徐々に日数を増やしていくのが継続のコツです。

まとめ:急がば回れ。「支援」という武器を使おう

ひきこもりからの社会復帰において、最も危険なのは「焦って、準備なしに、一般の求人に飛び込むこと」です。そこで傷つき、再びひきこもってしまう…その繰り返しを防ぐために、今回紹介したような「中間的な支援機関」が存在します。

サポステで自信をつける時間、就労移行でスキルを磨く時間、B型で体力を戻す時間。これらは決して「遠回り」ではありません。あなたが社会の中で、長く、安定して生きていくための、強固な土台を作るための「必要な時間」です。

一人で戦おうとしないでください。専門家の知恵と、制度の力を借りてください。まずは、気になった事業所のホームページを眺めることから、あなたの「就労プロジェクト」を始めてみませんか。

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