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ひきこもり支援サービスの全体像と選び方|相談・医療・居場所・就労まで回復ステージ別に完全解説

「ひきこもりの家族がいるけれど、行政、病院、NPO…いろいろありすぎて、結局どこに行けばいいのか分からない」
「支援を受けさせたいけれど、いきなりハローワークに行っていいの? それとも病院が先?」

ひきこもり支援の世界は、制度や窓口が複雑に入り組んでおり、当事者やご家族にとっては「迷路」のように見えることが多々あります。良かれと思って選んだ支援先が、ご本人の今の状態に合っておらず(例:エネルギーが枯渇しているのに就労支援に連れて行くなど)、かえって状況を悪化させてしまうケースも残念ながら少なくありません。

私自身、元当事者として断言できるのは、ひきこもりからの回復には「正しい順番」があるということです。

この記事は、日本国内で利用できる主要なひきこもり支援サービスを網羅し、それらを「回復の3つのステージ」に分類して整理した「支援活用の完全ロードマップ」です。

「今、自分(家族)はどのステージにいるのか」を確認しながら、その段階で最も効果的なサービスを選び取るための「羅針盤」としてご活用ください。

ひきこもり支援の全体像:3つのステージで考える

支援サービスをバラバラに見てはいけません。回復のプロセスに合わせて、以下の3段階で使い分ける意識が重要です。

【ステージ1:混乱・停滞期】
ひきこもりが始まったばかり、あるいは膠着状態で、本人も家族もどうしていいか分からず疲弊している時期。
→ 必要な支援:「相談」「医療」「家族支援」

【ステージ2:模索・充電期】
少しエネルギーが溜まり、家以外の場所や他人に関心が向き始めた時期。
→ 必要な支援:「居場所」「交流」「生活リズムの改善」

【ステージ3:社会参加・自立期】
具体的に「働きたい」「学びたい」という意欲が出てきた時期。
→ 必要な支援:「就労支援」「教育支援」

多くの失敗は、ステージ1の状態なのに、いきなりステージ3の支援(仕事探し)を求めてしまうことで起こります。焦らず、段階を踏むことが最短ルートです。

【ステージ1】まずは「孤立」を防ぐための支援サービス

この段階の目標は「解決」ではなく「安心」です。ご本人やご家族が抱えている不安を吐き出し、専門家と繋がることが最優先です。

1. ひきこもり地域支援センター(公的)

・役割:支援の「総合案内所(ハブ)」
・内容:都道府県や政令指定都市に設置されている公的な中核機関です。社会福祉士や精神保健福祉士が、ご本人やご家族の相談に乗り、状況を整理してくれます。
・使い時:「どこに相談していいか全く分からない時」の最初の一手として最適です。

2. 保健所・精神保健福祉センター(公的)

・役割:「メンタルヘルス」の相談窓口
・内容:地域の保健師や専門医が、心の健康相談に応じます。「ひきこもり」だけでなく「眠れない」「イライラする」といった身体・精神症状がある場合に強みを発揮します。
・使い時:「これは病気かもしれない?」「医療にかかるべきか?」と迷った時。

3. ひきこもり家族会(民間・NPO)

・役割:家族の「ピアサポート(仲間同士の支え合い)」
・内容:同じ悩みを持つ親たちが集まり、経験を共有したり、講師を招いて勉強したりします。「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」などが有名です。
・使い時:「親である自分が辛い」「近所の人には相談できない」「経験者の話を聞きたい」時。家族が元気を取り戻すことが、本人の回復に直結します。

4. 医療機関(精神科・心療内科・ひきこもり外来)

・役割:「診断」と「治療」
・内容:背景にあるうつ病、発達障害、不安障害などを診断し、必要に応じて薬物療法やカウンセリングを行います。
・使い時:本人の苦痛が強い時、または診断書を取得して公的支援(障害者手帳や年金など)に繋げたい時。

【ステージ2】「社会との接点」を回復する支援サービス

家族以外の人と関わりたい、家から出てみたい、と思い始めたらこの段階です。「評価されない」「頑張らなくていい」場所を選ぶのが鉄則です。

1. 居場所・フリースペース(NPO・公的)

・役割:家以外の「サードプレイス」
・内容:ゲームをしたり、雑談したり、静かに本を読んだり。何もしなくても許される空間です。
・使い時:「働けないけれど、家にはいたくない」「人恋しいけれど、深い付き合いは怖い」時。

2. 訪問支援・アウトリーチ(公的・NPO)

・役割:自宅への「架け橋」
・内容:支援員が自宅を訪問し、玄関先での会話や手紙の交換から関係を作ります。信頼できる第三者と関わる練習です。
・使い時:「本人が家から出られないが、第三者との関わりを求めている(あるいは家族以外なら話せる)」時。※強引な連れ出し業者には注意してください。

3. デイケア(医療機関)

・役割:医療的な「リハビリテーション」
・内容:病院に通い、スポーツや料理などのプログラムに参加します。看護師などの見守りがあるため安心感があります。
・使い時:主治医がいて、生活リズムを整えるための定期的な通所先が欲しい時。

4. 自立訓練・生活訓練(障害福祉サービス)

・役割:生活能力の「トレーニング」
・内容:障害者総合支援法に基づき、最長2年間、掃除・洗濯・金銭管理・対人スキルなどを学びます。通所型と宿泊型があります。
・使い時:障害者手帳などがあり、将来の一人暮らしや自立に向けて、生活の基礎を固めたい時。

【ステージ3】「仕事・学校」へ向かう支援サービス

生活リズムが整い、「社会に出たい」という意欲が固まってきたら、いよいよ具体的な進路支援の出番です。

1. 地域若者サポートステーション(サポステ)

・役割:就職の「準備運動」
・内容:15歳〜49歳対象。ビジネスマナー講座、コミュニケーション訓練、職場体験などを行います。いきなり面接に行くのが怖い人のための準備機関です。
・使い時:「働きたいけれど自信がない」「自分に向いている仕事が分からない」時。

2. ハローワーク(わかもの・専門援助)

・役割:「求人紹介」と「職業訓練」
・内容:仕事を探すだけでなく、無料でスキルを学べる「職業訓練(ハロートレーニング)」が強力な武器になります。
・使い時:「具体的な求人を探したい」「資格を取って自信をつけたい」時。

3. 就労移行支援事業所

・役割:障害者雇用への「パスポート」
・内容:障害等の診断がある方を対象に、一般就労へ向けた訓練と就職活動のサポート、就職後の定着支援を行います。
・使い時:「自分の特性(苦手なこと)を企業に理解してもらった上で、無理なく長く働きたい」時。

4. 通信制高校・フリースクール(教育)

・役割:「学び直し」と「学歴取得」
・内容:毎日通わなくてもよい学校や、個性を尊重する学びの場です。
・使い時:「就職の前に高卒資格を取りたい」「小中学校の勉強からやり直したい」時。

支援サービスを組み合わせる「ベストミックス」の考え方

これらのサービスは、どれか一つしか選べないわけではありません。状況に応じて組み合わせる(ベストミックス)ことが、回復を早めるコツです。

組み合わせ例A:まずは家族から動くケース

【対象】 本人が部屋から出てこず、会話もない。
【戦略】
1. 親が「地域支援センター」へ相談し、対応を学ぶ。
2. 親が「家族会」に参加し、メンタルを安定させる。
3. 親の変化を感じて本人が安心し、NPOの「訪問支援」を受け入れる。

組み合わせ例B:医療と福祉を併用するケース

【対象】 うつ症状があり、昼夜逆転している。
【戦略】
1. 「精神科(ひきこもり外来)」を受診し、服薬で睡眠を整える。
2. 体調が良い日の午後に「居場所」へ通ってみる。
3. 診断書をもとに「就労移行支援」へ通所を始める。

組み合わせ例C:経済的な自立を目指すケース

【対象】 アルバイト経験はあるが、長続きせず自信がない。
【戦略】
1. 「サポステ」でコミュニケーション講座を受ける。
2. 自宅でできる「クラウドソーシング(在宅ワーク)」で少額を稼ぎ、自信をつける。
3. 「ハローワーク」の職業訓練でPCスキルを身につけ、就職へ。

まとめ:あなたは「支援チーム」のマネージャー

ひきこもり支援サービスは、回復のための「道具」であり「材料」です。

ご本人やご家族は、これらの道具を使いこなす「プロジェクトマネージャー」のような存在だと考えてみてください。すべてを自分たちの力だけで解決する必要はありません。

「今は休む時期だから医療を使おう」「少し動けるからNPOを頼ろう」。そうやって、その時々の状態に合わせて、適切なプロフェッショナルをチームに招き入れてください。

日本には、この記事で紹介したような「使える公的・民間リソース」がたくさんあります。まずは、一番ハードルの低い「地域支援センター」への一本の電話から、あなただけの「支援チーム作り」を始めてみてください。

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