「三重県に住んでいるけれど、ひきこもりの悩みを相談できる場所が近くにあるのか分からない」
「津市や四日市まで行かないと、専門的な支援は受けられないのだろうか…」
南北に長い地形を持つ三重県。都市部にお住まいの方もいれば、移動に時間がかかる地域にお住まいの方もいます。「相談したいけれど、窓口が遠すぎる」「地元の役場では顔見知りがいて相談しにくい」といった地理的な悩みによって、支援への一歩を踏み出せずにいるご本人やご家族は少なくありません。
私自身、元当事者として、支援機関にたどり着くまでの「物理的・心理的な距離」がいかに大きな壁となるか、よく理解しています。
しかし、安心してください。三重県は、県の中心部だけでなく、各地域（北勢、中勢、南勢、伊賀、東紀州）ごとに相談の拠点となる「保健所」や「支援機関」を配置し、ネットワークを作っています。
この記事は、三重県にお住まいのご本人とご家族が、お住まいの地域で利用できる最適な支援に繋がるための「三重県版・支援完全マップ」です。県の専門機関から、地域の保健所、NPO、就労支援まで、その探し方と活用法を徹底的に解説します。
三重県の支援体制：「県センター」と「地域保健所」の二段構え
三重県で支援を探す際、まず押さえておくべきなのが、「県全体の司令塔（専門機関）」と「地域の相談窓口（保健所）」の役割分担です。
1. 県の専門拠点：「三重県ひきこもり地域支援センター」
津市にある「三重県精神保健福祉センター」の中に設置されている、県内支援の中核です。ここでは、ひきこもりに関する高度で専門的な相談を受け付けています。
特徴：
・精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家が対応。
・電話相談および来所相談（予約制）。
・県内全域を対象としていますが、遠方の方にとっては「電話相談」のメイン窓口となります。
2. 地域の拠点：「各地域の保健所」
「津市まで行くのは大変」という方のために、三重県は県内各地にある「保健所」を、ひきこもり相談の第一線窓口として位置づけています。
特徴：
・お住まいの市町を管轄する保健所に相談できます。
・「精神保健福祉相談」として、ひきこもりの悩みにも対応。
・地域に密着しているため、そのエリアにあるNPOや医療機関の情報に詳しい。
【STEP1】あなたの町の「第一相談窓口」はここ（エリア別）
では、具体的にお住まいの地域ごとに、どこへ電話をすればよいのかを見ていきましょう。迷ったら、まずはここが「入口」です。
北勢エリア（桑名・四日市・鈴鹿など）
人口が多く、支援リソースも比較的豊富なエリアです。
・桑名市、いなべ市、木曽岬町、東員町
窓口：桑名保健所（健康増進課 精神保健難病班）
こころの健康相談や、ひきこもりに関する家族相談を受け付けています。
・四日市市
窓口：四日市市保健所（保健予防課 精神保健係）
四日市市は保健所政令市であるため、県ではなく「市」の保健所が管轄です。専門医による相談日なども設けられています。
・鈴鹿市、亀山市
窓口：鈴鹿保健所（健康増進課 精神保健難病班）
精神保健福祉士や保健師が、ご本人やご家族の相談に応じます。
中勢エリア（津・松阪など）
県の中心部であり、専門機関へのアクセスが良いエリアです。
・津市
窓口：津保健所（健康増進課 精神保健難病班）
県の「ひきこもり地域支援センター」も津市内にありますが、まずは身近な保健所に相談するのもスムーズな方法です。
・松阪市、多気町、明和町、大台町
窓口：松阪保健所（健康増進課 精神保健難病班）
地域で活動するNPOや就労支援機関との連携も行っています。
伊賀エリア（伊賀・名張）
大阪方面へのアクセスも良い独自の文化圏です。
・伊賀市、名張市
窓口：伊賀保健所（健康増進課 精神保健難病班）
このエリアは、後述する「若者サポートステーション」の活動も活発で、就労支援との連携が期待できます。
南勢エリア（伊勢・鳥羽・志摩など）
広域になりますが、中心となる伊勢市に拠点が集まっています。
・伊勢市、鳥羽市、志摩市、玉城町、度会町、南伊勢町
窓口：伊勢保健所（健康増進課 精神保健難病班）
ご家族からの相談や、医療機関への橋渡しなどを行っています。
東紀州エリア（尾鷲・熊野）
県庁所在地からは距離がありますが、地域に密着した支援が行われています。
・尾鷲市、紀北町
窓口：尾鷲保健所（健康増進課 精神保健難病班）
・熊野市、御浜町、紀宝町
窓口：熊野保健所（健康増進課 精神保健難病班）
※各保健所の電話番号は、三重県の公式ホームページ「こころの健康センター」等のページで確認するか、市役所の福祉課に問い合わせると教えてもらえます。
【STEP2】三重県で活動する「民間支援・NPO・家族会」
公的な保健所は相談の「入口」として最適ですが、実際に通ったり、交流したりする「居場所」としては、民間のNPO団体や家族会が大きな役割を果たしています。
三重県内には、熱心に活動を続けている団体がいくつもあります。（※特定の団体を推奨するものではなく、支援の種類の例示です）
1. 家族会「みえオレンジの会」などのネットワーク
全国的なひきこもり家族会組織「KHJ」の三重県支部である「みえオレンジの会」は、三重県内で長年活動している代表的な家族会です。
・活動内容：
津市などを中心に、定期的な「例会（交流会）」や学習会を開催しています。「保健所に相談するのは気が引けるが、同じ悩みを持つ親同士なら話せる」というご家族にとって、孤立を防ぐ命綱となる場所です。
また、各地域（四日市や松阪など）にも、独自の「親の会」や「家族サロン」が点在しています。情報は保健所で入手できます。
2. NPOによる「居場所（フリースペース）」
ひきこもり経験者が安心して過ごせる「居場所」を運営するNPOも県内で活動しています。
・特徴：
一軒家などを利用したアットホームな場所や、パソコン作業などを通じて交流する場所などがあります。無理に話さなくてもいい、自分のペースで過ごせる「サードプレイス」です。
・探し方：
これらの情報はネット上に少ない場合があります。必ず【STEP1】の「保健所」や「ひきこもり地域支援センター」に、「通える居場所を紹介してほしい」と相談し、信頼できる団体を紹介してもらうのが最も安全で確実です。
【STEP3】「働きたい」を支える三重県の就労支援ネットワーク
ひきこもり状態から回復し、「少し働いてみたい」という意欲が出てきた時、三重県には「地域若者サポートステーション（サポステ）」の拠点が充実しています。
サポステは、厚生労働省委託の支援機関で、15歳～49歳までの「働くことに不安を抱える人」を対象に、就職前のリハビリ（コミュニケーション講座や職場体験）からサポートしてくれます。
県内4つのメイン拠点とサテライト
三重県は、各エリアにサポステが配置されており、アクセスしやすいのが強みです。
1. 若者サポートステーション・みえ（津市）
県の中央部に位置し、津市周辺の方をサポートしています。様々なセミナーや相談を行っています。
2. 北勢若者サポートステーション（四日市市）
四日市市、桑名市、鈴鹿市など、県北部の産業集積地エリアをカバーしています。企業との連携による職場体験なども期待できます。
3. 若者サポートステーション・伊勢（伊勢市）
伊勢市を中心とした南勢エリアをカバーしています。のんびりとした雰囲気の中で、相談からスタートできます。
4. なばり若者サポートステーション（名張市）
伊賀・名張エリアをカバーしています。地域に密着したきめ細かな支援が特徴です。
これらに加え、ハローワーク内での出張相談（サテライト）を行っている場合もあります。「働きたいけど自信がない」という方は、いきなりハローワークに行く前に、まずお近くのサポステに相談することをお勧めします。
その他の就労支援：ハローワークと職業訓練
もちろん、県内各地（津、四日市、伊勢、松阪、桑名、伊賀、尾鷲など）にある「ハローワーク」も重要な拠点です。
特に、当ブログの別記事（記事6）で解説した「職業訓練（ハロートレーニング）」は、三重県内のポリテクセンターや民間スクールでも実施されており、PCスキルや介護などを無料で学びながら、社会復帰の準備をすることができます。
【STEP4】生活・経済面の不安がある時の窓口
「ひきこもりが長期化して、親の年金だけでは生活が苦しい」「将来のお金が心配だ」という場合は、お住まいの市町にある「自立相談支援機関」が窓口です。
・窓口の名称：
多くの市町では、市役所・役場の「福祉課」や「社会福祉協議会」の中に設置されています。「くらしの相談窓口」「自立相談支援センター」といった名称の場合が多いです。
ここでは、ひきこもりの相談と併せて、家計の改善相談や、住居確保給付金、就労準備支援事業（働き出す前の準備プログラム）などの公的支援を受けることができます。
まとめ：三重県民は「保健所」と「サポステ」を活用しよう
この記事では、三重県で利用できるひきこもり支援の全体像を解説しました。
・STEP1：身近な相談窓口（各地域の保健所、県のセンター）
・STEP2：民間支援（みえオレンジの会、NPO居場所）
・STEP3：就労支援（県内4箇所のサポステ、ハローワーク）
・STEP4：経済支援（市町の自立相談窓口）
三重県は広いため、移動の負担が心配かもしれませんが、まずは「お住まいの地域を管轄する保健所」に電話をしてみてください。
そこが、あなたにとっての「支援への入り口」です。保健所の相談員は、管轄エリア内のNPOや医療機関、サポステなどの情報を網羅しています。「ひきこもりのことで相談したい」と伝えれば、あなたの家の近くにある、最適なリソースを必ず紹介してくれます。
一人で抱え込まず、まずは地元のプロフェッショナルである保健所を味方につけることから、「次の一歩」を始めてみてください。