【横浜市】ひきこもりの「居場所(フリースペース)」完全マップ|公的支援・NPOの探し方と選び方

「家から一歩も出られないわけではない。でも、いきなりアルバイトや就職活動をするのは、体力も自信もなくて無理だ」
「家族以外の人と話すのが怖い。でも、このまま孤立し続けるのも不安だ」
「週に1回でも、数時間でもいい。家以外のどこかに、自分が“ただ居てもいい”と思える安全な場所はないだろうか」

ひきこもり状態から「次の一歩」を踏み出そうとするとき、多くの人が直面するのが、この「0(自宅)」と「100(就労)」の間の、あまりにも大きな溝です。私自身、元当事者として、その溝を飛び越えられずに立ち尽くす苦しさを痛いほど理解しています。

その溝を埋めるために存在するのが、「居場所(フリースペース)」と呼ばれる支援の形です。

この記事は、日本有数の大都市であり、多様な支援リソースを持つ「横浜市」にお住まいのご本人やご家族のために、市内で利用できる「居場所」とは具体的にどのような場所なのか、そして、どうすれば自分に合った安全な居場所を見つけられるのか、その全体像と探し方を徹底的に解説する「横浜市・居場所マップ」です。

そもそも「居場所(フリースペース)」とは何か?

「居場所」と聞いても、具体的に何をする場所なのか、イメージが湧かない方も多いでしょう。まず、ひきこもり支援における「居場所」の定義と、他の支援との明確な違いを理解することが重要です。

「居場所」とは、その名の通り**「ご本人が、何の役割も求められず、安心して“ただ居る”ことを許される、家以外の第三の場所」**のことです。

学校や職場のように「成果」を求められることも、家庭のように「家族としての役割」を求められることもありません。「ひきこもっている自分」のまま、社会と繋がる“リハビリ”ができる空間、それが「居場所」です。

「デイケア」「作業所」「サポステ」との決定的な違い

「通う」という点では似ていますが、「居場所」は以下の支援とは目的が根本的に異なります。

・「デイケア」との違い
デイケアは、精神科病院などが運営する「医療機関」です(当ブログ・記事9「ひきこもり外来」参照)。医師や看護師の管理下で、治療やリハビリのプログラムが行われます。利用には医師の診断・指示が必要です。
対して「居場所」は、医療機関ではないため、診断がなくても利用できる場合がほとんどです。

・「就労継続支援B型(作業所)」との違い
作業所は、「障害者総合支援法」に基づく「福祉サービス」です。内職や軽作業などの「労働」を行い、その対価として「工賃」を得る場所です。働くことが目的となります。
対して「居場所」は、労働を強制されることはなく、お金を稼ぐことを目的としません。

・「サポステ(地域若者サポートステーション)」との違い
サポステは、「就労支援機関」です(当ブログ・記事6「ハローワーク」など参照)。コミュニケーション講座や職場体験など、「就職」というゴールに向けたプログラムが中心です。
対して「居場所」は、就職をゴールに設定していません。結果として就職に繋がることはあっても、まずは「安心して過ごすこと」自体が目的です。

このように、「居場所」は、医療・福祉・就労の“手前”にある、最もハードルの低い「社会参加の第一歩」と言えます。

【STEP1】横浜市の「公的な相談窓口」と「公的な居場所」

横浜市で「居場所」を探す旅は、まず「公的な総合窓口」に相談することから始まります。なぜなら、彼らが横浜市内のあらゆる「居場所」の情報を把握している「ハブ(拠点)」だからです。

中核拠点:横浜市ひきこもり地域支援センター「よこはま ひきこもりサポートネット」

横浜市のひきこもり支援の「司令塔」とも言えるのが、この「よこはま ひきこもりサポートネット」です。当ブログの別記事(記事2)で解説した「ひきこもり地域支援センター」の、横浜市における中核拠点です。

・役割:
専門の相談員が、ご本人やご家族からの相談(電話・来所・メール)に応じます。ここで重要なのは、彼らが横浜市全域の「公的な居場所」はもちろん、市と連携している「優良な民間のNPO居場所」のリストと情報を網羅的に把握していることです。

「居場所を探している」と相談すれば、あなたの状況やお住まいの地域(区)に合わせて、最適な選択肢を提案してくれます。自力で探す前に、まずここに相談するのが王道です。

身近な窓口:各区役所の「福祉保健センター(障害支援担当など)」

「いきなり市の専門機関はハードルが高い」という方は、お住まいの区役所が第一の窓口です。横浜市は18区(鶴見区, 神奈川区, 西区, 中区, 南区, 保土ケ谷区, 磯子区, 金沢区, 港北区, 戸塚区, 港南区, 旭区, 緑区, 瀬谷区, 栄区, 泉区, 青葉区, 都筑区)すべてに「福祉保健センター」があり、そこの精神保健福祉担当などが相談に応じてくれます。

・役割:
区の窓口は、市の中核拠点「サポートネット」と連携しています。区役所に相談すれば、地域の事情(「あなたの家の近くなら、〇〇というNPOが居場所をやっていますよ」など)を踏まえた上で、適切な場所を紹介してくれます。

若者向け公的居場所:「よこはま若者サポートステーション(サポステ)」

「サポステ」は本来「就労支援機関」ですが、横浜市のサポステ(「よこはま若者サポートステーション」など)は、就労プログラムの手前の段階として、非常に充実した「居場所」機能を提供しているのが特徴です。

・特徴:
「家から出る練習」として、サポステ内のフリースペースで過ごすことから始められる場合があります。そこには、同じように「働きたいけど、まだ自信がない」という仲間が集っています。雑談やPCの自習、簡単なプログラムへの参加を通じて、徐々に「通う」ことに慣れていくことができます。

若年層向け公的居場所:「横浜市青少年相談センター」など(不登校支援)

もしご本人が10代で、不登校がきっかけでひきこもり状態にある場合、「横浜市青少年相談センター」や、各区の「地域ユースプラザ」などが、学校以外の「居場所(適応指導教室など)」を提供しています。学習支援やSST(ソーシャルスキルトレーニング)など、学校復帰や社会参加に向けた支援が中心となります。

【STEP2】横浜市で活動する「民間のNPO法人」の居場所

公的な「居場所」が「総合病院の待合室」だとすれば、民間のNPOが運営する「居場所」は、より専門的でアットホームな「個人のカフェ」のようなものです。横浜市内には、長年の実績を持つ優良なNPOが数多く活動しています。

公的機関との違いは、その「多様性」と「柔軟性」にあります。(※本記事は特定の団体を推奨するものではなく、あくまで支援の「種類」の例示です)

タイプA:「フリースペース型(雑談・交流)」の居場所

最もオーソドックスなタイプです。NPOが借りているマンションの一室や公民館などで、決まった曜日・時間に開催されます。
・特徴:「何をしてもいいし、何もしなくてもいい」のがルール。漫画を読んだり、ゲームをしたり、持参したPC作業をしたり、スタッフや他の利用者と雑談したり。無理にコミュニケーションを取る必要はありません。
・費用:運営費(場所代、光熱費、お茶代など)として、1回数百円(例:300円~500円)程度の実費がかかる場合が多いです。

タイプB:「プログラム型(共同作業)」の居場所

ただ集まるだけでなく、何か「共通の目的」を持つことで、交流を促すタイプの居場所です。
・特徴:「みんなで昼食を作る(料理)」「畑仕事をする(農業体験)」「PCやデザインを教え合う(学習会)」「スポーツや音楽を楽しむ」など、共同作業を通じて自然なコミュニケーションが生まれます。
・費用:プログラムの材料費などが実費でかかる場合があります。

タイプC:「専門特化型」の居場所

特定の趣味や特性に絞った、より専門的な居場所です。
・特徴:例えば、「eスポーツ特化型」(ゲームを通じてコミュニケーションを図る)、「発達障害(グレーゾーン)当事者特化型」(同じ特性を持つ人同士で安心して過ごせる)、「女性専用」など、横浜市内でも細分化が進んでいます。自分の趣味や特性と合致すれば、これ以上ない「安心な場所」となり得ます。

タイプD:「ピアサポート型(当事者会・家族会)」の居場所

スタッフが運営するというよりは、「当事者同士」「家族同士」が集まり、お互いの悩みを話し、支え合う「自助グループ」としての側面が強い居場所です。「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の神奈川県支部(横浜市内で活動)などがこれにあたります。専門家のアドバイスより、同じ立場の人の「生の声」が聞きたい場合に適しています。

【最重要】失敗しない横浜市での「居場所」の探し方と選び方

横浜市内にこれほど多くの選択肢があるからこそ、「自分に合わない場所」を選んでしまい、かえって傷ついてしまう(二次被害)リスクも存在します。そうならないための、確実な探し方と選び方のステップを紹介します。

探し方1:【最推奨】公的機関に「紹介」してもらう

これが、元当事者として最も推奨する、唯一にして最強の「安全な探し方」です。

・手順:
1. まず、お住まいの「区役所 福祉保健センター」か、市の「よこはま ひきこもりサポートネット」に電話(またはメール)します。
2. そこで「ひきこもり状態で、働くのはまだ難しいが、リハビリとして通える“居場所”を探している」と、目的を明確に伝えます。
3. 相談員が、あなたの状況、年齢、お住まいの地域、趣味嗜好などを聞き取った上で、横浜市が把握している信頼できる「居場所リスト(公的・民間NPOの両方)」の中から、合いそうな場所をいくつかピックアップしてくれます。

・メリット:
この方法で紹介されるNPOは、少なくとも横浜市(行政)と連携が取れている、長年の活動実績がある「信頼できる団体」です。高額な費用を請求したり、強引な自立寮(当ブログ・記事10参照)に勧誘したりするような悪質業者を、この段階で100%排除できます。

探し方2:横浜市や各区の「社会福祉協議会」の情報を確認する

「横浜市社会福祉協議会」や、お住まいの「各区社会福祉協議会(例:港北区社協、戸塚区社協など)」も、地域の福祉活動のハブです。Webサイトなどで、地域のNPOの活動(居場所情報)を発信している場合があるため、チェックする価値があります。

探し方3:インターネット検索の危険性(注意点)

「横浜市 ひきこもり 居場所」と自力で検索すると、公的機関や優良NPOに混ざって、前述の「悪質な自立支援業者」が紛れ込んでいる可能性があります。

・見極めポイント:
・「居場所(フリースペース)」と称しているのに、月額数十万円の「寮費」や「支援費」を要求してこないか?(→記事5, 10で解説した危険な業者)
・「必ず自立させます」と強引な勧誘をしてこないか?
・見学を拒否したり、外部との連絡を制限したりしないか?

この見極めは非常に難しいため、やはり「公的機関からの紹介」が最も安全なのです。

選び方の絶対条件:「見学」と「相性」

公的機関から紹介されたとしても、その場所があなたに「合う」とは限りません。選ぶ際に最も重要なのは「スペック」ではなく「相性」です。

1. 必ず「見学」または「体験利用」をする
紹介されたら、まずは見学を申し込みます。そこで、以下の点を自分の目で確認してください。
・**雰囲気:**うるさすぎないか? 静かすぎないか? 清潔感はあるか?
・**スタッフの人柄:**威圧的ではないか? 親身になってくれそうか?
・**他の利用者の様子:**どんな年齢層の人が、どんな表情で過ごしているか?

2. 「合わない」と思ったら、断る勇気を持つ
見学してみて、「ここは違うな」と感じたら、無理に通う必要は一切ありません。その場で断ってもいいですし、紹介してくれた公的機関の相談員に「Aという場所は、少し雰囲気が合いませんでした。別の場所はありませんか?」とフィードバックしてください。相談員は、その情報を基に、次の候補を探してくれます。

「居場所」は、あなたが「安心」できる場所でなければ意味がありません。あなたが最もリラックスできる、あなただけの「サードプレイス」を、焦らず探すことが大切です。

まとめ:横浜市で孤立しないために

横浜市には、ひきこもり状態にある方を孤立させないための、公的・民間を合わせた膨大な支援ネットワーク(居場所)が存在します。

いきなり「働く」という高い山を目指す必要はありません。まずは「家から出る」「家族以外の人と同じ空間で過ごす」という、小さな一歩からで十分です。その一歩を、横浜市内の「居場所」が力強くサポートしてくれます。

この記事が、あなたの「次の一歩」を踏み出すための地図となれば幸いです。まずは、お住まいの区役所の「福祉保健センター」か、「よこはま ひきこもりサポートネット」に、「通える居場所を探している」と、その一言を伝えてみてください。

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